「ニュース」生成AI時代の学びは?“学校に裁量”で多様な子を包摂へ

日本ニュース
リアクション
2026年09月02日
生成AIが飛躍的に進化する中、2030年度以降の子どもたちの学びはどうなるのでしょうか。新たな学習指導要領の改訂に向け素案が公表されました。子どもたちを取り巻く課題や予測困難な時代と向き合うために、どう変わるのか見ていきます。(松井裕子解説委員)
放送日8月31日(月) 午後11:30配信期限9月7日(月) 午後11:40
「学習指導要領」は時代にあわせ、おおむね10年に1回改訂されていて、現在は2030年度以降の学習指導要領について、文部科学省の中教審=中央教育審議会で議論されています。
8月31日にその改訂に向けた素案が示されました。ポイントの1つが生成AIの技術革新などを見据えた「情報教育」の拡充です。
素案では「AIなどの情報技術が社会の基盤となる一方、SNSを介した偽情報の拡散や価値観を偏らせるなど民主主義社会の分断を招きかねない課題も顕在化している」とし、情報活用能力の向上が不可欠だとしています。
このため、小学校では3年生以降で学ぶ「総合的な学習の時間」を「総合的な探究の時間」としたうえで、「情報の領域」を新設するとしています。WEBアンケートを行いグラフ化するなど幅広く学びます。
中学校では「技術・家庭科」から「技術」を分け「情報・技術科」を新設するとし、データ分析やAIを活用したプログラミングなどを学ぶとしています。
高校も内容が高度化し、システム開発など、より専門的な内容が盛り込まれています。
“活用”だけでなく、ネット依存や偽情報のリスク、発信の責任や影響、AIに関する法制度など、ルールやメディアリテラシー、“負の側面”を学ぶことも重視しているのが特徴です。これらは2028年度から一部前倒しして導入される方向です。
実現にあたっては、小学校では週に1コマ程度、中学校では週1コマから2コマ程度行われる見込みで、今より情報に関する授業が増えることになります。
その時間は、各教科から「薄く広く捻出する」としていますが、具体像はこれからです。
また、誰がどう教えるのかという点では、国が研修を行うほか、学習動画を作成するなどして、小学校の担任が教えることも想定して条件整備をしていくとしていますが、現場が「これならできる」と思える具体像と環境が求められます。
もう1つの大きなポイントが、学校の裁量で柔軟な教育課程を組めるようにすることです。すでに国の研究校として先行して取り組む現場があります。
長野県御代田町の御代田北小学校では、2025年度から授業を1コマ45分から40分に変更することで時間を捻出しました。
その時間を活用して「総合的な学習の時間」を増やしたほか、昼休み後に1日20分、週4回の「マイタイム」という時間を設けています。
子どもたちが自分のやりたいことを追求する時間で、プログラミングに取り組む子や放射線について調べる子、バンドの練習をする子たちもいます。
ボッチャの大会に向け練習に取り組んでいた6年生の男子児童は「一人ひとり個人がやりたいこと、苦手なこと、得意なことを伸ばす、そのために使う時間です」と話していました。
またダンスに取り組んでいた5年生の女子児童は「自分が成長するために使う時間だと思っていて、こうなりたいから、こうしようと考える。大切な時間です」と語っていました。
この学校は、調査で学力は高めだった一方、自己肯定感の低さが課題だったことから「マイタイム」を導入したところ、子どもたちがより元気になり、この時間のために学校に来るようになった子もいるといいます。
教育課程を学校の裁量で組み替えるにあたって、働き方改革も進めたことで、これまでより40分早い午後3時15分にはすべての児童が下校。その時間を、研修など授業研究にもあてています。
自分たちの裁量で学びをデザインしやすくなることについて市川厚校長は「過去に経験した数回の改訂に比べると劇的に根本的に変わる。自分たちの指導だけではなく、教育観とか学校をどうつくるかとか、そこから考えて変わっていかなくてはいけない大きな機会になる」と話していました。
新たな学習指導要領では、こうした各学校が目の前の子どもたちの状況に応じて対応しやすくするために「調整授業時数制度」という仕組みを新たに作るとしています。
これは授業時数の一部を学校の裁量で調整して、ほかに組み替えられるものです。
組み替えの対象となる教科の最大15%程度を想定し、検討されています。
具体的には4つの目的に活用ができます。1つは「ほかの教科などへの上乗せ」です。学校の状況に応じて、苦手な子が多ければ算数を手厚くしたり、伸ばしたい力にあわせ総合的な学習の時間を増やしたりするイメージです。
もう1つは「教科の新設」です。例えば地域について学ぶ独自の教科などにあてられます。
また先ほどのマイタイムのように、子どもの状況に応じた「学習枠」や「教員の研究・研修枠」にも活用できます。
この2つの枠は教科に捉われない“裁量的な時間”で「学習枠」は週2コマ程度まで、「研究・研修枠」は週1コマ程度までと上限があります。
子どもの状況が多様化する中、一律の対応では限界があるため学校が創意工夫できることは重要です。国は参考事例を増やそうと、先行する研究校を来年度には1000校以上に増やす方針です。
初めての仕組みであり、学校現場がやりがいを持って、前向きに取り組める進め方が大事になります。
全体の大きな柱の1つとなっているのが「多様性の包摂」、多様な子を包み込む学びです。
「調整授業時数制度」でも多様な子に対応することに加え「特別の教育課程」によって個々に対応するとしています。
具体的には「不登校の子」や「特定の分野に特異な才能のある子」が新たに対象に加わります。
これにより、例えば校内外の教育支援センターに通う不登校の子が下の学年の学び直しができ、子ども自身もその計画の作成に関われるようにします。学ぶ意欲や自己肯定感を取り戻していく視点を重視しています。
また、特異な才能のある子では、例えば小学生が一部大学などでも学べるようにするとしています。
これまでも「特別の教育課程」の対象だった「通常学級に在籍しながら通級指導が必要な子」や「日本語指導が必要な子」についても内容を拡充するとしています。
ここまで見てきた学びを通し、学習指導要領全体では何を目指そうとしているのでしょうか。
素案では、変化が激しい社会を生きるために生涯にわたって学び続け、多様な他者と協働していく力が必要だとしています。
そのうえで「みずからの人生をかじ取りでき、民主的で持続可能な社会の創り手」をみんなで育むことを掲げています。
素案の方針について、インクルーシブな学校づくりに取り組み国の審議会の委員を務めるUNIVAの野口晃菜理事は「“多様性の包摂”が全体の柱の1つとなり、それが多様な子の学びを深めるためだけでなく、多様な子がともに過ごすことが民主的な社会の担い手の育成に直結すると位置づけられており、その意義は大きい」としています。そのうえで「通常学級の指導体制を手厚くし、担任1人で背負うのではなくチームでできる体制整備が今後の課題になる」としています。
現場からは「理念は大事」とか「学校に裁量があるのは歓迎」といった声がある一方、「教える内容が減らないと難しい」とか「人がそもそも足りない」といった声も聞かれます。
素案では各教科の内容を精選して絞り込みつつ、学習指導要領以上に教員の授業に影響しているともいわれる“教科書のスリム化”にもつなげるとしていますが、どこまで進むのでしょうか。
また教員不足対策と働き方改革はもちろん、実現に向けて教員や支援スタッフなど指導体制の充実や予算の拡充などは欠かせないと思います。
“同じペース”“同じ内容”の学びでは限界や苦しさがあった中、多様な子どもたちの可能性を伸ばし、それが互いの成長にもつながる学びに転換できるか、重要な局面にあると思います。
乗り越えるべき課題も多いですが、学校現場と教育委員会や国が立場を越えて対話を重ね、その道筋を探っていくことが大切になると思います。それもまた、子どもたちに求めようとしている力の1つではないでしょうか。

情報源: NHK NEWS WEB
https://news.web.nhk/newsweb/na/nd-20260902de47752
本動画は要約・音声読み上げによる非公式のニュース紹介です。

BGM: Kevin MacLeod (incompetech.com) — Licensed under Creative Commons: By Attribution 4.0 License (http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)