佐藤丙午×宮台真司×神保哲生:イラン攻撃に見るAI兵器を使った戦争の新しい形とは 【ダイジェスト】

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2026年04月11日
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マル激トーク・オン・ディマンド 第1305回(2026年4月11日)
『イラン攻撃に見るAI兵器を使った戦争の新しい形とは』
ゲスト:佐藤丙午氏(拓殖大学国際学部教授)
司会:神保哲生、宮台真司

 これがAI時代の戦争の新しい形なのか?

 アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃は、史上初の本格的なAI戦争として歴史に刻まれることになりそうだ。ロシアによるウクライナ侵攻でもAIは軍事利用されてきたが、その後、ここ数年のAIの目覚ましい進歩を受けて、イラン攻撃では情報分析から標的特定までAIが一体的に活用されたとみられている。そして、その結果として、戦争の形が大きく変わろうとしているというのだ。

 AI兵器は、火薬や核兵器に次ぐ「第3の軍事革命」ともいわれるが、その一方で、その非人道性や制御不能リスクはかねてから懸念されてきた。しかし、技術の急速な進歩に法整備が追いついておらず、国際的な規制の枠組みが全くないのが現状だ。

 AIの軍事利用に関する国際的な動向に詳しい拓殖大学の佐藤丙午教授は、今回のイラン攻撃では人物の特定や移動経路の予測などにAIが広く使われた可能性が高いと指摘する。実際に複数のイラン政府の幹部、とりわけ革命防衛隊幹部や宗教指導者だけがピンポイントで次々と殺害されたことから、アメリカとイスラエルがイラン内部の情報をかなり緻密に把握した上で攻撃を実行していたとみられている。そして、殺害すべき標的特定の正確性とその所在や行動を詳細に把握するスピードが、これまでのヒューマンインテリジェンスでは到底有り得ないほど迅速だったことから、標的やその所在の特定にAIが使われた可能性が高いと考えられているのだ。

 これまで標的を特定したり、その所在を把握したりするためには、地上で活動する情報部員が集めた情報にスパイからもたらされる情報などを加え、更にその上に衛星画像や膨大な量の通信記録や傍受された通信内容などを加えたインテリジェンスを、最後は人間が分析しなければならなかった。しかし、それをAIに行わせれば、人間では何日も、あるいは何カ月もかかる分析が一瞬でできてしまう可能性がある。今回アメリカとイスラエルが開戦直後から宗教指導者と革命防衛隊の幹部だけを根こそぎピンポイントで攻撃し殺害できたのは、このためだと考えられているのだ。

 その一方で、AIは人の命を救う側面も持つ。AIを使って標的を特定した上で精密誘導弾などによりピンポイントで標的を攻撃することで、これまでのような無差別な攻撃と比べると、一般市民の犠牲は遥かに小さくて済むのもまた事実だからだ。しかし、そのような形でAIを使った攻撃を認めてしまえば今後、戦争のハードルが下がる懸念もある。これまで、民間人を巻き込み、大勢の兵士が犠牲になるからこそ、戦争は許されないと考えられてきた。しかし、AIによって被害を限定できるのであれば、ある程度戦争は許容されるという話になりかねないからだ。AI兵器は戦争をめぐる倫理の前提そのものを問い直している。

 AI兵器をめぐっては、国連で議論が続いている。特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みのもと、LAWS(自律型致死無人兵器システム)の規制について検討が進められているが、明確な国際ルールは確立されていない。そもそもLAWSには決まった定義すらまだないのだが、国際赤十字は「人間の介在なしに、敵を探し、判断して攻撃する兵器システム」としており、こうした理解が主流となっているが、国際的なルールづくりが難航し明確なルールがないまま各国がAI兵器をめぐる競争を進めているのが現状だ。

 AI兵器は戦争をどう変えるのか、国際的な規制の議論はどこまで進んでいるのか、日本の役割は何かなどについて、LAWSに関する国連専門家会合にも参加している拓殖大学国際学部教授の佐藤丙午氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

【プロフィール】
佐藤 丙午 (さとう へいご)
拓殖大学国際学部教授、海外事情研究所所長
1966年岡山県生まれ。89年筑波大学第一学群人文学類卒業。97年ジョージ・ワシントン大学大学院修士課程修了。99年一橋大学大学院博士課程修了。博士(法学)。専門は国際関係論、安全保障論、アメリカ政治外交。防衛研究所主任研究官などを経て、2006年より拓殖大学海外事情研究所教授。13年より拓殖大学国際学部教授、23年より海外事情研究所所長。LAWSに関する国連専門家会合に日本代表団として参加。共著に『ドローンが変える戦争』、監訳書に『エコノミック・ステイトクラフト』など。

宮台 真司 (みやだい しんじ)
社会学者
1959年宮城県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。社会学博士。東京都立大学助教授、首都大学東京准教授、東京都立大学教授を経て2024年退官。専門は社会システム論。(博士論文は『権力の予期理論』。)著書に『日本の難点』、『14歳からの社会学』、『正義から享楽へ-映画は近代の幻を暴く-』、『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』、共著に『民主主義が一度もなかった国・日本』など。

神保 哲生 (じんぼう てつお)
ジャーナリスト/ビデオニュース・ドットコム代表 ・編集主幹
1961年東京都生まれ。87年コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。クリスチャン・サイエンス・モニター、AP通信など米国報道機関の記者を経て99年ニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を開局し代表に就任。著書に『地雷リポート』、『ツバル 地球温暖化に沈む国』、『PC遠隔操作事件』、訳書に『食の終焉』、『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』など。

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(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)

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