親の仲が悪い時に子どもに起きる困難とその対処法を精神科医が解説します。

精神科医 芳賀高浩
リアクション
2026年04月01日
こんばんは。精神科医の芳賀高浩でございます。
今日はですね、「親の仲が悪い」という、なかなか厄介で、でも実はものすごく多い悩みについてお話ししていこうと思います。よろしくお願いします。

皆さんの中にも、親御さんがご存命の方、たくさんいらっしゃると思います。もちろん年齢が上がってくると、親が亡くなっている方も増えてきますが、この動画を見てくださっている方の中心って、だいたい30代、40代、50代が多いんですよね。だから、まだ親が生きている、そして親との関係に悩んでいる方も多いんじゃないかと思います。

親の仲って、良い家庭もあれば、悪い家庭もあります。で、これ、私の臨床経験から言ってもそうなんですが、メンタルの問題に関心がある方、あるいはメンタルで苦労されている方の背景を見ていくと、「親の仲が悪かった」というケース、かなり多いです。だから、今日この話は、刺さる人にはすごく刺さると思います。

そもそも親って、最初から仲が悪いわけじゃないんですよね。もちろん例外はあります。望まない妊娠だった、事情があって結婚した、そういうケースもゼロではありません。でも、多くの場合は「好きだから結婚した」。そして子どもが生まれるっていうのは、基本的には愛の結晶なんですよ。少なくとも当初は、です。だからこそ、子どもとしては不思議なんです。

「え? なんでこの二人、昔は好きだったはずなのに、なんでこんなに仲が悪いの?」
物心ついたときからずっと、親がピリピリしてる。口を開けば喧嘩。家にいると空気が重い。帰りたくない。そんな家庭で育った方、結構いらっしゃると思います。

親の仲が悪いと、何が一番しんどいか。
私はまず、「子どもが親に気を遣わなきゃいけなくなる」ことが一番の問題だと思います。

もちろんね、同じ屋根の下で暮らしている以上、お互い気を遣い合うのは当たり前です。親だって大変だし、子どもだってわがまま放題でいいわけじゃない。だけど、子どもにとって親って、本来は「安全基地」であってほしいんですよ。これは精神科医としての私の本音です。

人間って、生きていれば嫌なことが必ず起きます。学校でいじめられた。友達関係がうまくいかなかった。勉強がうまくいかなかった。会社で怒られた。仕事ができないと言われた。孤立した。恋愛で傷ついた。失敗した。恥をかいた。
こういうこと、日常的に起きるんです。

昔の日本と比べれば、飢えて死ぬとか、戦争で命を落とすとか、そういう危機は今の日本では少ないです。少ないけれど、じゃあ幸せかと言うとそうでもなくて、むしろ“人間関係”の中でストレスを生む構造が残っている。暇になって、余裕ができたはずなのに、仲間外れを作ったり、誰かを攻撃対象にしたり、そんなことが起きる。つまり、多くの人は、地味に、そして継続的にストレスを浴びて生きているわけです。

だからこそ、人間には「逃げ場」が必要なんです。
気を張らなくてもいい場所。評価されなくてもいい場所。かっこつけなくてもいい場所。弱音を吐いても大丈夫な場所。ありのままでいても許される場所。
それが、安全基地です。

本来なら、家が安全基地になってほしい。
親が安全基地であってほしい。
でも、親の仲が悪い家庭では、それが成立しなくなるんですよ。

どうなるか。子どもは、親の機嫌を読むようになります。

父親の機嫌が悪い。
「今、話しかけたらダメだな」
母親がイライラしている。
「ここで何か言ったら火に油だな」
親が喧嘩しそうな雰囲気になったら、子どもが間に入って止めようとする。あるいは、空気を和らげようと冗談を言ったり、いい子を演じたりする。

これね、子どもって、本当はやりたくないんです。
だけど、やってしまう。

なぜかと言うと、子どもにとって「親が仲良い」というのは、自分の存在意義の土台だからです。自分は愛されて生まれてきた。だから親は仲良いはずだ。仲良くあってほしい。仲が悪いなんて、認めたくない。
他人の家庭の夫婦仲なんて、正直どうでもいいじゃないですか。でも、自分の親となると、別なんですよ。ここが子どもの心理なんです。

だから、親が喧嘩している姿を見ると、すごくしんどい。
恥ずかしい。惨め。やめてくれよ。頼むから仲良くしてくれよ。
そういう気持ちになる。

それで子どもは、親の間を取り持つようになります。
その結果どうなるか。

家が、安全基地じゃなくなるんです。

家に帰っても休まらない。家で落ち着けない。親の顔色を見て、空気を読んで、地雷を踏まないように過ごす。そうなると、常に緊張状態が続きます。

イメージとしては、ゴムをずっと伸ばしっぱなしにしている状態です。
伸ばしっぱなしって、疲れるんですよ。
そして、ちょっとした刺激で「パチン」と切れる。

これが、レジリエンスが弱くなる、ということです。

レジリエンスって何かというと、しんどいことが起きたときに、受け流したり、立て直したり、踏ん張ったりする力のことです。人は誰でも、ある程度は持っています。でも、家庭でずっと気を張っていると、レジリエンスを蓄える時間がない。回復する時間がない。だから、外で少し嫌なことが起きただけでも、耐えきれなくなる。涙が止まらなくなる。怒りが爆発する。体調が崩れる。心が折れる。
そういうことが起きやすくなるんです。

「なるほど、確かに」って思われる方も多いと思います。
でもじゃあ、どうしたらいいのか。

親の仲を、子どもが変えることはできません。
これはもう、残酷ですけど、事実です。子どもがどれだけ頑張っても、親が変わらなければ変わらない。子どもが仲裁役を続けても、根本解決にはならない。むしろ、子どもが疲弊するだけになることが多い。

だから答えは一つです。
どこかに、安全基地を作らなきゃいけない。

安全基地っていうのは、自分が頑張って“良い人”を演じなくても、認めてもらえる場所です。ガチガチに武装していかなくても、自分の存在が肯定される場所です。
そして、親の仲が悪かった家庭で育った方ほど、この安全基地を“意識的に”作らないといけません。自然にできる人もいます。でも、それは少数派です。

じゃあどこに作るのか。

結論から言うと、私は「お金を払って作った方がいい」と思っています。
ここは賛否あると思いますよ。でも、無料で安全基地を探そうとすると、リスクが上がります。怪しいコミュニティ、搾取するグループ、依存を煽る集まり、あるいは内部で揉めて崩壊する集団。そういうところに巻き込まれる危険がある。

もちろん、無料でも良い場所はあります。ありますが、見分けが難しい。
だから、最初は“プロが監督している場所”の方が打率が高いんです。

例えば、医療機関やカウンセリング機関が運営しているグループ。
あるいは、きちんと訓練を受けた専門職がスーパーバイズしている集まり。
集団って、実は放っておくと簡単に荒れます。力関係ができる。支配が起きる。依存が生まれる。誰かが誰かを攻撃する。そういうことが起きやすい。だから、「チェック役」が必要なんです。プロの目が必要なんです。

ただね、ここも注意点があって、医療者がいるから全部安心かというと、そうでもない。医療者側にやる気がなくて、チェック機能が形だけになっている場所もあります。だから「プロが監督している」という条件は重要だけど、それだけで100点ではない。それでも、何も監督がない集団に比べれば、リスクは下がる。ここは現実として知っておいてほしいです。

理想はもちろん、新しい家庭を築いて、そこで安全基地を作ることです。素晴らしいパートナーと出会って、落ち着く家を作って、そこで回復していく。これが一番いい。実際そういう方もいます。親の仲が悪くて苦労したけれど、パートナーと出会って救われた。家庭が安全基地になった。そういう方もいる。

でも、それができない事情がある方もいます。結婚が難しい、パートナーがいない、あるいは家庭を築いてもそこが安全基地にならない。そういう方も、当然います。だからこそ、安全基地は家庭だけに依存しない方がいい。複数あった方がいい。

安全基地は一つじゃなくていいんです。
むしろ二つ三つあった方がいい。

「この場所がだめでも、こっちがある」
そう思えるだけで、人は折れにくくなります。

ちなみに、私のコミュニティでも、できるだけ安全基地として機能するように、スーパーバイズというか、チェック役として頑張っているつもりです。興味があれば、メンバーシップに入ってライブに参加してみてもいいし、興味がなければ入らなくてもいい。入ってみて「思ってたのと違った」と感じたら、別の場所を探せばいい。それでいいんです。大事なのは、「自分が安心していられる場所」を諦めないことです。

親の仲が悪かった人は、どうしても心のどこかで、今でも親を仲良くさせたい気持ちが残ります。
「もうどうでもいい」と言いながら、心の奥ではまだ諦めきれていないことが多い。
そしてそれが、あなたの優しさでもあるんです。

でもね、その優しさを、親の仲裁に全部使わなくていい。
あなたがあなたを守るために、安全基地を作っていい。
そこにエネルギーを使っていい。

今日はですね、「親の仲が悪い」という悩みが、子どもにどんな影響を与えるのか。そして、その中でどうやって生き延びて、どうやって回復していくのか。その鍵は「安全基地を作ること」なんだ、というお話をさせていただきました。

明日もまた必ず、皆さんとお会いしましょう。
精神科医の芳賀高浩でございました。
ではまた皆さん、また明日。さよなら。